Memorial 幻水オケ感想レポ

2022.10.16「幻想水滸伝」フルオーケストラコンサート"Symphonic Poem from 幻想水滸伝"の和久の感想レポートです。 11/10ラジオ「幻想水滸伝の世界」にて読んでいただきました!
こちらは、番組に提出した文章全文になります。番組では上手いことまとめていただいていたのですが、実はこんなにありました。

感想全文

今回のオーケストラ、最初四時間と聞いた時に、正直「長い…!」と思いましたが、全くそんな事はなかったです。
最後の感想は「私は何を見せられたんだ…」という呆然とした恍惚感でした。

最初の約10分間のレクイエム フォー スイコデン、最初の合唱でもう鳥肌が全開でした。私が感じたのは、政治の腐敗、ひずみによって、世の中にある民衆の苦しみの声、それから段々と希望を見出す力強い声、それでも大きな流れの中で、苦しみと希望はなくなることはなく、誰かが救われれば誰かがつらく悲しい思いをする…そんな、絶えず流れる歴史の中の、人々の声と、それを慰める音の癒しを感じました。

公演中は、余りにも幻想水滸伝の中に入り込んでいたがゆえに、ゲームの中で戦い、傷つく、自分は主人公(プレイヤー)でもあり、すべての流れを俯瞰的に眺める事のできるレックナート様のような星読師のような視点でもあり、ただのモブのようでもあり、アンコールまで終わった後、「あのレクイエムはワタシの心を鎮めるために捧げてくれたのだな…」などと、思いました。

■ファンタジーオブスイコデン
幻水1~5までを横断的に一つの曲としてまとめた初の作品なのでは!!と思いました。
幻想水滸伝は、ナンバーが進むごとに2Dから3Dの画面へと変化していった作品ですが、一曲としてまとめて聞きながらまとめて画面を見るのは私は初めてで、自分のプレイの追体験をわくわくとしながら興奮して体感しました。
プログラムノート(パンフレット)に、「モチーフを宝探しのように聞いてください」というコメントがありましたが、音楽音痴のため楽譜を見ても恐らくヒントの半分も分かりませんでした。音楽音痴の為に是非、「お宝」の解説が聞いてみたい!と思いました。

■バトルリミックス
いやこれ本当に恰好良くて突然ライブ会場に来てペンライト振りたくなる興奮を覚えました!!!!
ゲームで幾度となく繰り返し繰り返し聞く戦闘シーンの音楽は、RPGをプレイする記憶を瞬間的に思い出させますし、苦労したあの「あきらめる・あきらめない」の選択肢や、キャラクターの必死のレベル上げなど、まさにゲームそのものを思い出させる音楽です。
そして音楽を聴くと、ネクロード戦の曲は本当に恰好良いのですが、やっぱりあのキャラクター性のせいもあり、「ネクロード、こんな最高の演奏をしてもらえるなんてずるい!!!」(笑)という気持ちにもなりました。
今回、パイプオルガンのソロも素晴らしいと思ったのですが、合唱も含めて、エレキギターが全ての音楽を飲みこむような瞬間もあって、あの場にいた全員が「こんなネクロード、はじめて…」となったのではないでしょうか。
イヤ本当に恰好よかたです!!!ずるい!!

■交響詩「ソウルイーター」
ソウルイーターにまつわる物語を時系列順に並べた事、そしてソウルイーター目線を意識されたのも、公式画像では初めてではないでしょうか。というか今回は、公式画像を使用して新解釈を提起する初めての試みと、オーケストラの生演奏という二つの要素が見て聴いている私たちを大きく揺さぶるコンサートでした。「鈍器で殴られるような感覚」のような、音楽で揺さぶられ、ゲーム画面でも揺さぶられ、全編通して公演中、私たちを「幻想の世界へ」連れていくそんな空間でした。

ソウルイーターについて話を戻して…。
交響詩「ソウルイーター」は、ゲームプレイヤーが知るソウルイーターの最初の出発点「隠された紋章の村」でのテッドとおじいちゃんの紋章の継承シーン…隠された紋章の村の音楽は、郷愁を誘うような透明な音、「失われた日々」、大切な人との日常を奪うシーンから始まりました。それだけで結果をしるプレーヤーとしては心を掻きむしられる思いでしたが、ここから幻水4の霧の船のシーンへ流れるように150年の歳月が経ちます。テッドが、もう一度ソウルイーターと向き合うと決めローブを脱ぐシーン…、ゲームプレイ中は緊迫した空気感を持ってプレイしていた記憶があるのですが、今回のオーケストラでは、テッドの密やかな高揚感と、元来彼の持っている明るさを表すような音楽に乗せてゲーム画面を見ていたので、救われたような気持ちになりました。
幻水4の航海がテッドとソウルイーターを再び結びつけ、前を向くキッカケになり、それから幻水1のマクドール家ではすっかり居候として、坊ちゃんに心を許し、自分の秘密を明かそうとする…穏やかにも明るいお調子者のテッド、という、ゲームプレイ開始当初の「テッド」として登場します。(もうここまでで大分自分のHPが減ってきているのに、交響詩ソウルイータ、まだ半分残ってます)「最強の敵」そして「ここだけの話」「感動のテーマ」と続く音楽は、非常に緊迫感を持って聴くことになりました。プレイ当初、クイーンアントや、カナンやクレイズのシーンは、ゲーム序盤ということもあり、深刻さもありつつコミカルなシーンも混じっていて、ゲームの入りやすさという意味での「軽さ」があった印象ですが、今回のオーケストラ中、ソウルイーターの300年かけてうかがってきた機会、として、この「最強の敵」を聞いた時、また「鈍器で殴られるような感覚」になりました。何回も幻水をプレイしているはずなのに、新しい感情を持ってゲーム画面と音楽を聴けた。何度でも言ってしまいたくなりますが、今回のオーケストラは、新たな幻想水滸伝を私たちに提示してくれました。

テッドが坊ちゃんにソウルイーターを渡した後、私たちもよく知る解放戦争の中での、親しき人々の魂を掠め取り力を増していくソウルイーターを中心とした音楽はまだまだ続きます。「グレミオ特製シチュー」「ゴージャス・スカーレティシア」は、グレミオに焦点を当てたターンでしたが、死を免れない事を知っている私たちはこの優しかったり、華やかで優雅な音楽を「もうどういう顔して聞いたらいいのか、わからない!!!」というのが本音でした。
続いてテオ様のシーンですが、一騎討ちのシーンをじっくり、あの緊迫した音楽に乗せて画面でもじっくり見せてくるなんて…!!!声が出ません。
でも、後半で出てくるルカ様の一騎打ちのあの波乱の一騎打ちシーンに比べると、なんとテオ様の温かみのある言葉と態度だったのでしょうか…。音楽について素人で申し訳ないのですが、ルカ様戦は、楽器を打ち叩くような演奏、このテオ様のシーンは、包み込むような演奏であったなと思います。
最後、テッドとウィンディのシーンを経て、そして「Avertuneiro Antes Lance Mao~戦いは終わった~」の、大合唱に続くのですが、正直に言えば情緒がぐちゃぐちゃでもうコメントができません……。プログラムノートには「明るく前向きな楽曲」と書かれていましたが、個人的な感想を言わせてもらうと立ち直ることができず鎮魂歌的な要素が強く印象に残った最後でした。
(Avertuneiro Antes Lance Mao~戦いは終わった~、は、明るく高らかに歌えば素晴らしい勝利の歌にも聴こえるのに、今回、それだけではない印象を受けました。ソウルイーター目線、ということから意図して編曲、指揮されたのか、今思うと気になります)
プログラムノートに書かれた庄司さんのコメントにもある「ライトモティーフ」という技法についてももう少し詳しくお聞きしたいなと思いました!

■第二部の「27の真の紋章」、第三部
演奏を聞いている時には余りにも音楽とゲーム映像の世界に入り込んでいて、気づかなかった事があります。プログラムノートを読んで、どうしてここまで入りこめたのか、納得がいきました。それは「制作者である音楽のプロフェッショナルとして、クラッシック音楽とゲームという異なる時代の娯楽をひとつにする試み」によってもたらされた「新しい感動」を感じたからです。
制作者、演奏者の方々の幻水シリーズへの深い考察があった上での音楽との融合…こんなオーケストラは初めてで、ゲーム史にもオーケストラ史にも残る試みなのではないでしょうか!!

第二部、第三部とあまりにも完成された空間だったため、細かい一曲ずつの感想が正直あまり出てこず。断片的に印象に残っていることを書かせてもらいます。

27の紋章で「竜の紋章」をピックアップしてくれたのが嬉しかったです。幻水のあの世界において、異界の存在である竜を、この世界に繋ぐ唯一の竜の紋章。それは百万世界の扉を開く門の紋章とも異質の存在…なのかどうかは、明かされていないと思うのですが、幻水の竜という存在はモンスターとは一線を画す知的な存在です。あのファンファーレの高らかな音と、その後に続く優しい旋律は、ゲームプレイ中にも非常に印象的で、今回の生演奏では更に優しい音として聞こえました。

この27の紋章の演奏は、幻水4の罰の紋章、太陽の紋章と眷属で幻水5、ソウルイーターと竜の紋章で幻水1、夜の紋章と月の紋章それから黒き刃の紋章と輝く盾の紋章で幻水2、とそして五行の真の紋章という幻水3の、紋章という視点から全シリーズを横断する構成になっていました。全シリーズ通して紋章について横断的に一つにまとめあげたことが、これこそ幻水史上初の試みだったのでは??と思い、思い返しても興奮冷めやりません。
それぞれの紋章のもつ特性が、よく現れた演奏で、個人的には罰の紋章の海らしい漂うような音が、他シリーズと違って聞こえて印象に残っています。
各紋章の持つ、意思、というのでしょうか…。楽曲を作られた時に、よくよく紋章の性質に関しても考察されたのではないかなと感じました。罰の紋章って他の紋章に比べると移り気で、それこそ海を漂う気まぐれさも感じるんです。合奏を聴きながら、ソウルイーターであればテッドの感じ取った「悪しき意思」、罰の紋章であればその「気まぐれさ」など、個人的にも色々解釈しながら聞くことができました。

■第二部後半から第三部にかけて…
何度も言ってしまいますが、これ、幻水史上初の、幻水2全編プレイ&全生演奏&新解釈…という…コンサート終わった後の感想が、本当に「凄いものを体感してしまった…」という、一言でした。

一つ一つの楽曲の素晴らしさもそうですし、2主人公と、ジョウイの視点が入れ替わるように、交互に互いの思いが音楽に乗せられ、ゲームをプレイしている時には気づかなかったジョウイの感情に気づく事ができました。
プレイしている時には、どうしても2主人公(プレイヤー)の気持ちに偏ってイベントを見がちですが、今回、始まりの紋章の持つ宿命を軸に、ゲンカクとハーンという二人の親友、それから2主人公とジョウイという親友同士、そして更に始まりの紋章のもつ性質を乗り越えるための仲間たちやナナミという大きな存在…都市同盟とハイランド 王国という一つの土地にそれぞれ芽生えた意思…そういったものを、全部、見て、聴いて、追体験した。そう感じることができました。
言ってることめちゃくちゃなのですが、一言では言えない体験をしたのです。これが新しいゲームとクラシックの溶け合った体験なのかな、と…。

■アンコールも素晴らしかったんですよ!!
一曲目はゴシックネクロードで、もう、エレキギターが大暴れでパイプオルガンに食ってかかるような演奏で大興奮でした!
二曲目はなんと!!
リマスター版の開発途中のゲーム映像おそらく初公開で!!幻水1&2のオープニング演奏でした。
これからリマスター版で初めて幻水をプレイする人も出てくると思うので、今回の元々のビジュアルを使用した1?5のオーケストラは、今の時期だからこそ出来たのだと思います。リマスター版が発売されてしまうと、また情報の出し方が難しくなると思うので。ネタバレとか。
だからこそDVDとかでもう一度見れたらなぁ、などと思いますし、できれば再公演してほしい!!!!と、心底思います!!!


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